義民のあしあと

細野冉兵衛(慈眼寺)


天保5年(1834)、常陸国新治郡坂村(今の茨城県かすみがうら市)において、名主が土浦藩の代官と結託して年貢米を不当に徴収して私腹を肥やしていた疑惑が持ち上がります。そこで坂村の貝塚恒助が発頭人となり、志戸崎の慈眼寺で寄合を開き、人望が厚かった土浦藩東郷名主惣代・細野冉兵衛(ぜんべえ)に嘆願するとともに、その証拠探しをしていたところ、代官に捕らえられてしまいます。連絡を受けた細野冉兵衛は、逆に代官を捕縛したため騒ぎが大きくなり、土浦藩から永牢を申し渡されて獄中で亡くなります。貝塚恒助も行年25歳で打首となりますが、死後に「宝性院行義説民居士」の名が贈られました。


目次
  1. 慈眼寺の概要
  2. 慈眼寺へのアクセス
  3. 義民伝承の内容と背景
  4. 参考文献


慈眼寺へのアクセス

注意
文中に特定の場所の緯度・経度が記載されている場合は、検索ボックス内に値(例えば「35.689634, 139.692101」)をコピーして検索ボタンをクリックすれば、該当する場所の地図(Googleマップ)が表示されます。
名称 慈眼寺
場所 茨城県かすみがうら市志戸崎788
(この地図の緯度・経度:36.069525, 140.370142)
備考 「慈眼寺」は、淡水魚水族館のかすみがうら市水族館前の道路を西方向に600メートルほど道なりに進んだ集落内にあります。無住の寺院で、境内には宝篋印塔が多く建てられ、入口が空き地状になっています。付近の道路沿いに「大黒屋商店」の店舗や「貝塚忠三郎商店」の看板がありますので、強いて言えばこれが目印になります。
「細野冉兵衛の墓」は、かすみがうら市深谷地内(36.099, 140.292)にあり、国道354号にごく近いものの、脇道に入るのでわかりにくくなっています。有限会社塚本建設(かすみがうら市深谷762-1)が目印で、道路挟んで反対側の墓地内、中央の新しい墓碑の右側にある、竿石に「晴蓮院有徳賢心居士」、上台に「野細」(右横書き風)と刻まれているのがそれです。以前は林に覆われていましたが、現在は樹木が切り払われて整然としています。現在は国道356号で分断されていますが、国道のすぐ北側が細野冉兵衛の出身地の御幣集落で、ここから不動尊を経て南に向かう旧道沿いにあたります。
「貝塚恒助の墓」は、かすみがうら市下軽部289所在「長福寺」境内に隣接する霊園内の最奥部(36.10956, 140.34410)に位置し、竿石に「宝性院行義説民居士」、上台に「氏塚貝」とあるのがそれです。こちらもわかりにくいですが、国道356号方面から訪れると入口に「茨城県指定天然記念物 出島の椎(長福寺)」という看板が立っています。
リンク [クリックして遷移]


義民伝承の内容と背景

天保5年(1834)、常陸国新治郡坂村(今の茨城県かすみがうら市)において、名主・長左衛門が土浦藩の出役(代官)・高野喜蔵と結託し、年貢米を不当に徴収して私腹を肥やしていた疑惑が持ち上がります。

そこで坂村の貝塚恒助が発頭人となり、志戸崎の慈眼寺で何度も寄合を開いて対応を協議するとともに、豪放な性格で人望も厚かった隣村深谷村の土浦藩東郷名主惣代・細野冉兵衛(ぜんべえ)に嘆願しますが、まずは証拠を集めて出訴するようにと諭されます。

この細野冉兵衛は、私財を投じて荒れ地を開墾し、藩公・土屋英直から「幾とせも こころをこめて ふかやなる 松もろともに 民もさかへぬ」という和歌を贈られたり、文政5年(1822)に土浦藩領の出羽国天童で一揆が起きた際には、藩から派遣されて一揆を鎮撫したりした功績の持ち主でした。

貝塚恒助は農民への年貢の割当を記した小割付帳を調べていたところ、代官に捕らえられてしまい、連絡を受けた細野冉兵衛は、農民の味方に立って逆に代官を捕縛したため騒ぎが大きくなります。

これが「坂村大騒動」「志戸崎騒動」ともいわれる一揆の顛末ですが、土浦藩では細野冉兵衛のこれまでの功績に免じて「耄碌」で済まそうとしたものの、冉兵衛が強固に否定するためついに永牢が申し渡されることとなり、天保6年(1835)正月に72歳で牢死します。

貝塚恒助も天保5年12月(1835年1月)25日、行年25歳で打首となり、ほかに8名が追放、20名が手鎖などの処分を受けていますが、ことに貝塚恒助については死後に「義民」であることを示す「宝性院行義説民居士」という名が贈られ、菩提寺の長福寺に葬られました。

いっぽうで土浦藩出役は追放、坂村名主は御役仰免となり、農民側の犠牲を伴いながらもこの騒動は幕引きとなりました。


参考文献・参考資料


書誌情報(ISBNコード・著者・発行年・出版社など)はリンク先の下部に記載があります。リンクがない参考文献は、一般に流通しない稀覯本や私家本が多いものの、国立国会図書館で貸出をしている場合があります。

↑ ページの最初に戻る