義民のあしあと

松岡半十郎(梅干し半十郎観音)



江戸末期の福知山藩(今の京都府福知山市)では、財政難打開のため専売制が強化されるなどして庶民の不満が鬱積していましたが、安政6年(1859)7月、専売制で暴利を得ていた産物会所に松岡半十郎と西郷新太郎の浪人2名が押し入って金品を強奪し、貧しい庶民に分け与える事件が発生します。ほどなく2名は捕らえられ、新太郎は牢死し、半十郎は町中引き廻しの上、和久市三昧の仕置場で打首となりました。死に臨んで半十郎は隠し持っていた小さな観音像を飲み込み、自分の墓に好物の梅干しを供えれば首から上の病気を治すと言い残したため、義賊「梅干し半十郎」として祀られるようになりました。


目次
  1. 梅干し半十郎観音の概要
  2. 梅干し半十郎観音へのアクセス
  3. 義民伝承の内容と背景
  4. 参考文献



梅干し半十郎観音へのアクセス

注意
文中に特定の場所の緯度・経度が記載されている場合は、検索ボックス内に値(例えば「35.689634, 139.692101」)をコピーして検索ボタンをクリックすれば、該当する場所の地図(Googleマップ)が表示されます。

名称

梅干し半十郎観音 [参考リンク]

場所

京都府福知山市和久市町地内
(この地図の緯度・経度:35.3071208, 135.1184195)

備考

「梅干し半十郎観音」は、由良川や市民体育館に近い福知山市の市街地にあります。周囲に戸建住宅やアパートが立ち並ぶ一角ですが、「梅ぼし半十郎観音 妙徳伴大明神」の比較的目立つ看板が掲げられた瓦屋根のお堂がありますのですぐにわかります。最寄りの「厄除神社前」バス停(京都交通まちなか循環線北ルートで福知山駅まで10分)からも100メートルほどの距離です。



義民伝承の内容と背景

財政難にあえぐ江戸末期の福知山藩(今の京都府福知山市)では、小身から取り立てられた市川儀右衛門が中心となって、年貢の増徴や専売制の強化、倹約と貯蓄の押し付けなどによる打開を図ろうとし、町人・農民を問わず庶民の不満が鬱積していました。

このような中、万延元年(1860)7月4日夜、専売制で暴利を得ていた福知山城下の広小路にあった産物会所に何者かが押し入り、留守番だった手代・大津屋常七と小使・川北屋喜兵衛を殺害して金品を強奪し、貧しい庶民に分け与えるという事件が発生します。

事件の犯人は福知山の松本屋銀兵衛という親分の用心棒として居候していた松岡半十郎と西郷新太郎という2名の浪人であり、福知山を離れるにあたってこの挙に出て、何鹿郡(いかるがぐん)梅迫村(現在の京都府綾部市)まで逃れたところで捕縛されてしまいます。

捕らえられた2名のうち、新太郎のほうは厳しい取調べの中で8月に牢死し、半十郎は町中引き廻しの上、同年12月20日に和久市三昧の仕置場で打首となりました。

死に臨んで半十郎は、「三味線の 糸より細き わが命 引き廻されて 撥(ばち)は目の前」の辞世の句を詠み、隠し持っていた1寸5分(約5センチ)の小さな守り本尊を誰かに譲ろうとしますが、役人を恐れて申し出る者はありませんでした。

そこで半十郎は、この観音像を飲み込むと、「自分の墓に好物の梅干しを供えれば、観音様のご利益で首から上の病気を治す」と言い残して亡くなったため、義賊「梅干し半十郎」として祀られるようになりました。

江戸時代の史料には「遠近ゟ右半十郎墓所へ参詣人数多有之、何か信心いたし候ヘハ諸病共平癒之よし、梅干を持夥敷参詣人也」として、梅干しを持った参詣人が半十郎の墓に多数押しかけ、一種の「はやり神」となったため、役人が出張してきて参詣人を追い払うようすが書かれています。

事件後の万延元年(1860)8月には、福知山藩で会所や庄屋の屋敷などを打ち毀す空前の「市川騒動」と呼ばれる一揆が勃発し、責任をとって家老の原井惣左衛門や市川儀右衛門がみずから切腹(ただし、『福知山市史』が引用する史料「一揆大騒動記録」には、市川儀右衛門は「おくびようもの故」なかなか切腹しなかったので、親類の吉沢藤右衛門が首を切り、切腹したことにしたとあります。)したほか、藩主の朽木綱張も幕府の奏者番を辞任に追い込まれています。

現在、「梅干し半十郎観音」では地元有志による奉賛会が組織され、毎年の命日に近くの日蓮宗常照寺から住職を導師に招いて大祭を挙行しており、大祭当日は観音堂の裏に生えている梅の木の実からつくった梅干しが参列者に振る舞われます。



参考文献・参考資料


リンク先のAmazonのページ下部に書誌情報(ISBNコード・著者・発行年・出版社など)が記載されています。リンクなしは稀覯本や私家本ですが、国立国会図書館で借りられる場合があります。



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谷川 彰英 (監修)
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